東京高等裁判所 平成3年(行コ)11号 判決
本件支出は、本件県道の拡張推進事業の推進費という名目で訴外委員会に交付された補助金の支出であるが、右補助金の申請及び交付の段階において県道拡幅工事は既にほぼ終了しており、本件補助金は、むしろ、県道拡幅工事が終了した後、これによって生じた段差につき、段差が生じたこと自体による利用上の不便や宅地の価格の下落等の不利益に対しては県からの補償を受けられなかったことによって住民の間に生じた不満をなだめるため、訴外委員会において、そのような不利益に対する迷惑料的な趣旨の補償として住民に配分する目的で補助金の交付申請をし、新穂村もそのような趣旨で交付したものということができる。
右のような趣旨で住民に補償金を配分するために補助金を交付することは、本件県道の改良事業が全体として円滑に遂行されて完成する上で一定の意義を持ち得ることは否めないから、その交付の趣旨自体が公益に合致しないものとはいえないというべきである。しかし、村としては、そのような補助金を交付する場合には、まず前提として、その補助金を得てなされる補償金の配分が、公益目的実現のために必要かつ有効、適切な措置であるか否かを十分検討すべきことはもちろんであるが、更にその配分が段差による不利益を蒙っている住民に対し、その者の不利益の程度に応じて公平かつ平等に、合理的に配分されるか否かについても慎重に検討すべきであり、それらの点について問題があるような事業に対する補助金の交付は公益上の必要がある場合に当たらないというべきである。
ところが、本件支出にかかる補助金について訴外委員会が行ったのは一二名の者に対する単純な均等配分であるが、段差が生じた者はほかにも多数いること、当初補助金の交付決定がなされた際に予定されていた補償金配分対象者は一六名であり、交付決定された一九四万四〇〇〇円という金額も右一六名の者の各自の所有地の間口と奥行に応じた面積を基礎として算出した各人の配分額を合算して積算されたものであったが、配分対象を一二名とする旨の補助事業の変更承認は、右総額はそのままとしながら、配分対象の人数を減じ、配分金額も機械的に均分額とするものであり、そのように変更した理由について、承認申請では単にその後訴外委員会で検討した結果、そのほうがより関係者の理解を得やすいとの結論に達したというのみで、それ以上何の説明もなされていないこと、右一二名は段差が二五ないし四八センチメートルある者であるが、他にもそれ以上の段差のある者があり、中には一・四メートル、一・五メートルの段差の者もあること、段差が二五センチメートル未満の者も含めて、右一二名の者がそれ以外の者と比較して、段差によって蒙る不利益の程度がどれほど異なるか明らかでないことに加え、原審証人本間進、同引野晃、同引野眞喜男の各証言及び原審における控訴人本人尋問の結果によると、村では右補償金を配分すべき対象者の調査、選定、配分金額等については訴外委員会にすべて任せ切っており、右補助金の交付の決定ないし補助金事業計画変更の承認の際にも、訴外委員会の提出した申請内容をそのまま承認したにすぎず、特段独自の調査、検討をしていないこと、原審証人高野光の証言によると、段差のある者で右補償金の交付を受けられなかった者の間には不満があることが認められ、これらの点からすれば、本件支出にかかる補助金について訴外委員会が行う補償金の配分は公平、平等かつ合理的なものとはいえないから、右補助金の交付には公益上の必要性があったということはできない。
したがって、本件支出は、公益上の必要性を欠く違法な公金の支出であるといわざるをえない。
(菊池 新城 奥田)